足裏体圧分布と体運動習性・体癖

足の3点支に注目し体量配分を分析した研究者として野口整体の創始者 野口晴哉氏および柳田利昭氏がいる。「体癖・体勢」に代表される彼らの洞察および理論な深遠なものであり,その一部が研究成果の日本体育学会大会号で読むことができるものの,その全貌は謎に包まれている。過去の叡智はドグマとして形骸化しやすい。そうではなく,今生きる私達が今まさに,活きた知恵として最発見し,自己の体運動習性と結びついた形で優れた見解を得ることが重要である。このデータを図1に示す体量配分と区別して図2に示す足裏体圧分布と呼んでいる。


体運動習性研究所ではインソール型圧力センサを用いることで,さらに細かいデータを測定,分析していく。体量配分は左右6点のみ計測可能で,瞬間計測値のみが得られた。足裏体圧分布では左右198点の時系列データが得られる。


図3に示す5つの動作が,整体協会で用いられてきた「基本動作」である。人間のすべての動作がこの5つの組み合わせからなり,それぞれの動作に対する感受性の差異が体運動習性を形成していると考える。(a)は挙上で上下方向の動きの感受性を見る。(b)は左右方向,(c)はねじれ方向,(d)は開閉方向,(e)は前後方向にそれぞれ対応する。例えば図2の足裏体圧分布が足裏体圧分布の時系列平均値として導出された場合,(c)の捻転,特に左ねじれに反応を示す可能性が高く,勝ち負け,とくに勝とうとする傾向が強くなると予想できる。




それぞれ自己同一化しやすい方向性,及び人間という身体構造において増幅された結果認められる感受性を一般的な言語で平均的に形容すると以下の通り。


(a)大脳昇華:体圧が前にかかる、足先に近い部分にかかりやすい人達は、腰椎1番に常に力が集まってる状態で、首の力が抜けず頭が緊張しやすい。思考に同一化しやすい。上に伸び上る様に歩行する。大脳が忙しく働くタイプ。「考える」と云う大脳活動をすることで鬱さんを得る人たち。行動するよりも考えている、頭を動かしている時間が長い。


(b)消化器昇華:体圧が左右どちらかに常に偏よってしまう人達は、腰椎2番に力が集まりやすく,感情の発散や集中に特徴を持ち,感情に同一化しやすい。消化器系が働くことで鬱さんを図るタイプ。感情的、情動的であり何事も直截に捉えようとする傾向がある。喜怒哀楽が激しいか他人の感情に振り回されるかのどちらか。食欲によって体の状態を推し量れる人たち。


(c)泌尿器昇華:左右の足裏の体圧分布が逆になっており体を捻じることで力を発揮するタイプ。泌尿器系の活動に集中するタイプで何事にも勝負として判断する。実際に結果した物事にしか興味を示さない。空想が出来ない。勝ち負けにこだわり,闘争に同一化しやすい。


(d)生殖器昇華:体圧が母指側,あるいは外側によりやすい人たちは,腰椎4番に力が集まり,種族保存的な愛情,本能に同一化しやすい。

特に内側裡側に集まる人達は、集注が抜けず持続する。集注の果てに深く本質を捉えるため虚飾、装飾、無意味なコケ脅しを嫌う。生殖本能的であり、鬱散より抑制に向かう傾向がある。

逆にどんな場合においても外側に重心があり、点に集中しにくいタイプは,積算と云うものが出来ない。片づけも苦手。ぱっと広げた散らばりようの量で多い、少ないを判断する見込み算しか出来ない。中心を捉えられない感受性のため逆に中心に執着し,人の中心となり,注目をあつめることで鬱散する。


(e)呼吸器昇華:体圧というより重心が前寄り、あるいは、後ろ寄りの人達は腰椎5番に力が集まっており動くこと、動かないことにそれぞれ特性を持ち行動に同一化しやすい。

前に体圧分布が顕著な場合は、運動系の活発なタイプであり、呼吸器を旺盛に働かせることで鬱さんを得る人たちである。常に動き回り、前のめりで考えなしに動く傾向があるため功利的な感性を持つ。

一方で後ろに体圧分布が顕著な場合は,歩行する前足も後ろ重心であり、前に進むも後ろを見ているような重心をしている。優柔不断で結論を先延ばししたがる人で呼吸器が生来弱いため、省力的になるたけ少しづつ少しづつ使おうとする。

そこで体力がいる決断をなるたけ先に延ばしたがるのである。ロマンチストとも云えるが現実的な力量をさらしたくないため、霧の中でぼんやり大きく見せたいのだともいえる。


一般的にはこれらの組み合わせがそのひとの体運動習性を形成し,その結果たる感受性は絵の具をまぜたときのようにまったく異なって認識され得る。

ただし,どれが良いというわけでなく,習慣化し固定化したとき全てが悪癖であるといえる。逆に,それが固定的でない自由な動きとして発現したとき,それは愛であり,音楽だ。


図1 体量配分

図2 足裏体圧分布

図3 基本動作